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『これは、これは。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。それにマリアンヌ様に、アナスタシア様。ようこそ御出下さいました』
『久しいな支配人。私の旅の仲間の彼女は来ているかな?』
国王陛下。正確には王太后陛下の御助言を受けて、国王陛下が勅許を下して王都で運営をされている、公営の賭博場に足を運ぶと。初老の人間の男性である支配人が、私達三人を恭しく出迎えてくれましたが。
『はい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。真に御手を煩わせますが、支配人室へ御足労を頂けないでしょうか?』
私は振り返って、マリアンヌとアニーの二人の女性の方を見ると。二人ともある程度予想は付いていたという表情を浮かべていますね。
『ある程度は予想をしていたが。支配人室からは、賭博場全体が見下ろせるはずだな?』
『はい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
支配人に案内をされて、賭博場全体を見渡せる支配人室から見下ろすと…。
『またまた勇者様御一行の御仲間の勝利です。これで十日間連続での大勝となりますっ』
『キャッホーーーッ♪。まだまだいくよっ』
『…………』
『支配人。普通は公営、非合法を問わずに、賭博場では胴元が勝てるようになっているのではないのか?』
賭博場を見下ろしながら私が疑問を口にすると。胴元としての経験が豊富な支配人は、苦渋を表情に滲ませて。
『はい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。レムリア王国の法律が許す範囲で、有りとあらゆる手段を講じてはいるのですが…』
『フルハウス。あたしの勝ちね♪』
賭博場を見下ろしながら、ドワーフの女性であるアニーが呆れたような口調で。
『人間が、カードで小人族に勝てる訳が無いでしょ。小人族は手先に目が付いているようなものよ』
アニーの感想に、支配人を含む全員が同意して頷いたので。
『この公営の賭博場には、小人族のディーラーは居ないのか?。支配人』
私の問いに支配人は、疲労感を滲ませた表情で。
『本来賭博場には、小人族は立ち入り自体を禁じておりますが。魔王討伐の勇者様御一行の御仲間となりますと、入場を禁止する訳にはいかず…』
『ストレートフラッシュ。またまたあたしの勝ちね♪』
これは流石に、支配人が気の毒になりますね。
『判った。私の方で何とかしよう』
『心底よりの御礼を申し上げます。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』
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