魔王討伐完了後の恩賞

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『おっちゃん、久し振り。肉団子入りのシチュー頂戴♪』 『おう、久し振りだなホビー。直ぐに用意をするから待ってな』 『うん。おっちゃん♪』 先程まで公営の賭博場で荒稼ぎをしていた、私の旅の仲間の小人族の女性はホビーと呼ばれています。呼ばれていると言うのは、彼女は自由気ままに大陸を放浪している間、その時その時で気に入った名前を名乗っていたそうですけれど。そのうち本名を忘れてしまったそうなので、今では趣味や道楽という意味の言葉である、ホビーと名乗っていますね。 『ありがとねクリス。カードの勝負の緊張感も楽しいけれど。盗賊のお仕事の、罠発見と罠解除と鍵開けの三点セットがもたらす興奮も好きだから。そろそろお仕事をしたいと考えていたんだ♪』 私は肉団子亭のテーブル席の椅子に座ると。多分私よりも年長だと思いますけれど、小柄な体格の小人族の女性であるホビーに対して微笑んで。 『それは良かったですねホビー。ホビーを賭博場から当面の間連れ出した事により、賭博場の支配人にも私は感謝をされましたしね』 ハーフエルフの女性であるマリアンヌと、ドワーフの女性であるアニーの恋人同士も、並んでテーブル席に腰掛けると。 『ホビーは賭事で手に入れたお金を使うよりも、勝負事の緊張感を楽しむのを好む性格だものね。賭博場で稼いだ賭金はどうするつもりなの?』 肉団子亭の従業員が運んで来たシチューを食べ始めたホビーは、マリアンヌの問いに対して。 『うーん、特に考えていないけれど。以前にクリスが勧めてくれたみたいに。またハイデルのおっちゃんに預けておこうかな?』 ホビーは魔王討伐の功績で国王陛下から頂いた報酬にも興味が無くて、ほぼ全額をハイデル商会の長である、グレゴール・ハイデル商会長に預けて資金を運用させていますね。 『私とマリーの二人も、国王陛下から頂いた報酬の大半は、以前から取引があるハイデル商会長に預けているからね』 ドワーフの女性であるアニーの話に私は頷いて。 『ロデリック男爵から男爵邸を買取り、改装工事を行う手続きも、ハイデル商会長に任せるつもりでいますね。上得意の顧客の立場を維持しておけば。今後も私達に対して引き続き便宜を図ってくれると思いますからね』
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