第二章  北上編

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『ホビーの姉御。何卒御気を付けて』 『ありがと♪。マスター』 国王陛下が、ホビーの事を裏社会でその名を知られていると、仰られてはいましたけれどね。 『王都に御立ち寄りの際には、是非ギルドへ御越し下さい。ホビーの姉御』 『気が向いたらね。マスター♪』 『レムリア王国の王都の盗賊ギルドの、ギルドマスター以下幹部が勢揃いをしての見送りとなっています。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』 王都の隊商の集合地で、私は旅の仲間であるハーフエルフのマリアンヌに対して頷くと。 『黒服の集団が昼間から集まっている様子は目立つと私も思うが。向こうよりは静かだと思うがな』 『『聖女様。聖女様。どうか御身体に御気を付け下さいませ』』 『ありがとうございます。皆さん。皆さんの方こそ、御身体に気を付けて下さい』 『『おお、何と御優しい御言葉を。聖女様万歳。聖女様万歳』』 盗賊ギルドの黒服集団と、貧民窟の信者の集団に囲まれて。私達は王都から北に向けて出立をする事になりますね…。 『隊長。煩わせて済まぬな』 北に向かう隊商を率いるエルフの女性の隊長は、苦笑を浮かべながら首を横に振って。 『いえ、御気になさらないで下さい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』 このエルフの女性の隊長は、かつては肉団子亭の親方と共に冒険者をしていたそうですね。冒険者を引退後に、親方は王都で冒険者向けの酒場兼宿屋の冒険者の店を開店して。こちらのエルフの女性の隊長、メイデン隊長という名前ですけれどね。メイデン隊長は、隊商を新たに組織して、大陸の様々な国々を相手に商売をされているそうですね。 『勇者クリストファー様。大変御待たせを致しまして、申し訳御座いませんでした』 信者との別れの挨拶を終えた、聖女カタリナが私に対して謝罪をしたので。私は首を横に振ると。 『いや、聖女カタリナは信徒に慕われていると、感心をしていた所だ』 『ああっ、何と御優しい御言葉でしょうか。勇者クリストファー様』 …父親であるアルバート・フォン・テルモス子爵に引き渡した方が、楽だった気もしますけれど。魔王討伐の旅の仲間であった聖女カタリナが、テルモス子爵領で軟禁生活を送る事になるのを見過ごすのは、信義に反していると思いますからね。 『ホビーの方も挨拶は終わったな。待たせたな隊長。出立をしよう』
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