魔王討伐完了後の恩賞

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『親方の作る肉団子入りのシチューは、いつ食べても素晴らしいと思いますね』 店のカウンター席に座り、温かい食べ物である肉団子入りのシチューを味わいながら私が率直な感想を述べると。親方は嬉しそうに髭面を綻ばせて。 『そう言ってもらえると嬉しいぜクリス。何せこの“肉団子亭”の看板料理だからな』 王都の裏通りにある、酒場と宿屋を兼ねている冒険者の店である肉団子亭ですけれど。未だ午前中という事もあり、店内には私達しか居ませんね。 『景気の方はどう?。親方』 私の左隣のカウンター席に座り、同じ肉団子入りのシチューを食べていたマリアンヌが尋ねると。親方は苦笑を浮かべて。 『魔王軍の残党が、お前さん達勇者一行を恐れて北の魔族の領域に引っ込んでからは、依頼が減ったのは事実だな』 魔王率いる魔王軍は、レムリア王国の北側から侵略を開始して、レムリア王国の北側に隣接していた小王国を滅ぼして占領した以外にも。レムリア王国内の貴族の領地の幾つかと、近隣の国々や都市にも侵略の魔の手を伸ばしましたけれど。戦線を拡大し過ぎて、占領地に充分な兵力を駐留させる事が出来なかったのが、魔王軍の敗因の一つとなりましたね。 『私は魔王軍に侵略された、レムリア王国の男爵領生まれの平民なので。魔王軍との戦争が始まる前の、王都の冒険者の店がどういう依頼を受けていたのか知らないのですが。魔王軍との戦争が無い時は、どのような依頼を冒険者の店は受けているのですか?』 私の疑問に経験豊富な熟練の冒険者だった親方は、店の奥から依頼書の束を持って来てくれました。 『街道を移動する隊商の護衛の依頼や、盗賊団や山賊団退治の依頼が多いな。盗賊団や山賊団は、盗賊ギルドに所属していないモグリの連中だから。盗賊ギルドの方から退治の依頼もあるな』 親方の説明を聞いて、マリアンヌの左隣に座っている。親方と同族のドワーフの女性であるアニーが、呆れたような表情を浮かべて。 『王都の盗賊ギルドにすれば、モグリの盗賊団や山賊団は縄張り荒しでしょ。自分達で始末をつけないの?』 年下の同族のドワーフのアニーの呆れたような口調に、親方は苦笑を浮かべながら。 『盗賊ギルドの構成員の大半は、荒事に関わらない連中だからな。死の制裁が必要な、重大な規律違反を犯した奴には。盗賊ギルドから暗殺者を差し向けるけれどな』
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