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『これは、これは。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。御足労を頂きまして、申し訳御座いません。マリアンヌ様と、アナスタシア様も、御久し振りで御座います』
王都の高級住宅街の一角にある、ハイデル商会の本部で私は頷いて。
『久しいな。グレゴール』
グレゴール・ハイデル商会長は。私に対して恭しく深々と御辞儀をすると。
『はい。クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。ささっ、どうぞこちらへ。直ぐに御茶を準備させます』
『うむ』
私はハイデル商会長に、奥の客間に案内をされると。使用人がテーブルの上に用意をした紅茶を一口飲んでから、ハイデル商会長に対して。
『内密な話をしたいグレゴール』
ハイデル商会長は、私に対して頭を下げると、使用人達を全員下がらせたので。私は周囲に人の気配が無くなったのを確認してから。
『昨日国王陛下から、伯爵位の爵位を授与されたばかりの元平民にしては、上手く貴族に見えましたか?。ハイデル商会長』
私が口調を改めて、以前から取引があったハイデル商会長に尋ねると。ハイデル商会長は今度は愛想笑いとは異なる種類の、本物の笑みを浮かべて。
『お見事です、クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。王太后陛下付きの侍女長様から、短期間の間に猛特訓をお受けになられただけの事は御座いますな』
『私は初日で諦めたけれど。クリスとマリーの二人は、貴族と侍女に成り切る術を身に付けたわね』
アナスタシア、アニーが。テーブルの上の御茶菓子を口に入れながら話すと。ハイデル商会長は柔らかい笑みを浮かべて。
『人には向き不向きという物が御座います、アナスタシア様。それでクリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。本日はどのような御用件でしょうか?』
私はハイデル商会長に対して頷くと。
『はい。実は今朝王城で王太后陛下から、伯爵位の家格に相応しい邸宅を構えるように御助言を頂きまして。ハイデル商会長にご相談をしたくてお訪ねしましたね』
私の話を聞いたハイデル商会長は、王都の地図をテーブルの上に広げて。
『王都は国王陛下と王太后陛下の御二方が御住まいになられている王城を中心に、中央部に近ければ近い程に家格が高いと見なされています。伯爵位の家格に相応しい邸宅となりますと、立地条件が限定されます』
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