第二章  北上編

56/57
1178人が本棚に入れています
本棚に追加
/2320ページ
『ヒュウウーーーーッ』 『寒くはありませんか?。聖女カタリナ』 お風呂上がりに、夜のテルモス子爵領の城下町へと散策に出掛けたのですが。女性の身体を冷やしてしまう行為だったかも知れませんね。 『大丈夫です勇者クリストファー様。あの、でも、腕を組んで歩いても宜しいでしょうか?』 遠慮がちに尋ねた聖女カタリナに対して、私は笑顔で頷いて。 『ええ。勿論構いませんよ。聖女カタリナ』 『ありがとうございます。勇者クリストファー様♪』 『ムニュッ』 わたしと添い寝をした時もですけれど。聖女カタリナは私に自らの女体の柔らかい部分を押し付けるのを好むようですね。 『兄ちゃん、別嬪さんを連れているな、羨ましいぜ♪』 ふむ。私と聖女カタリナの事を知らないという事は…。 『都市国家同盟から来られた、商人の方ですか?』 私の問いに、酒場帰りなのか、赤ら顔で上機嫌の男性は頷いて。 『おう。こう見えても鉄血騎士団御用達の商人だぜ♪』 成る程。 『レムリア王国での商売はどうですか?』 『悪くは無いな兄ちゃん。マクシミリアン騎士団長閣下が統率をされている、鉄の規律を誇る鉄血騎士団領内と比べれば。かなり自由に商売が出来るからな』 都市国家同盟最強の鉄血騎士団は、自らの領地を領有している一つの国家ですからね。 『テルモス子爵領の北側、正確には北東方向ですね。ソリュード伯爵領で商売をされた事はありますか?』 『ああ。ここも悪くはないけれど、ソリュード伯爵領の景気の良さは凄いな。領主のクリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下は、一体どんな手を使っているのか。俺達都市国家同盟出身の商人達からすれば謎だからな』 留守を任せた者達は、仕事を適切に遂行しているようですね。 『貴重なお話しを聞かせて頂けて事に、御礼を言いますね』 『気にするな兄ちゃん。別嬪さんの恋人を大切にな♪』 『はい。私の大切な人ですから』 千鳥足の都市国家同盟出身の商人の男性が遠ざかると。私の大切な旅の仲間である聖女カタリナは、腕を組んでいる私の顔を見上げて。 『勇者クリストファー様の、今の御言葉は本当の事でしょうか?』 恋人という部分は異なりますが…。 『聖女カタリナが、私の大切な人である事は本当です』 私の返答に聖女カタリナは、今まで見た中で最高の笑顔を浮かべましたね。
/2320ページ

最初のコメントを投稿しよう!