第二章  北上編

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『アーサー・フォン・テルモス領主代行様。御父君であらせられる、アルバート・フォン・テルモス子爵閣下への書状を御願い致します』 『はい。マリアンヌ女史。王太后陛下への書状は、御任せします』 聖女カタリナと共に一夜を過ごした翌朝。私の政治面での理解者でもある、王太后陛下付きの侍女のマリアンヌが、早目に城館に迎えに来てくれたのですけれど。昨夜の私と聖女カタリナのやり取りの内容を聞くと、ある程度は予想をしていたようで。私とアーサー卿とマリアンヌの三人で話したいと言い、手際よく話を纏めましたね。 『私と聖女カタリナの周囲に居る、アーサー・フォン・テルモス領主代行とマリアンヌの二人が気を利かせて。王太后陛下と、アルバート・フォン・テルモス子爵の御二人に。書状を送ったという形式で良いのだな?』 テルモス子爵家の嫡男である、アーサー卿の前ですから。私の大切な旅の仲間の一人であるマリアンヌは、レムリア王国の伯爵である私に対して、王太后陛下付きの侍女という身分で恭しく深々と御辞儀をして。 『はい。勇者クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。あくまでも御二方の周囲に居る者が気を利かせて、王都に書状を送った形にするのが最善と思われます』 マリアンヌの話に、アーサー卿も頭を下げて。 『私もマリアンヌ女史の言われる方式が最善かと思われます。勇者クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下』 私が魔王軍と直接戦った、レムリア王国の北方貴族諸侯領と、都市国家同盟の北部地域では。私の名前と爵位の前に、国王陛下から頂いた勇者の称号を付けて呼ぶのが。最大限の敬意を込めた呼び方とされていますね。 『卿達には苦労をかけるな。私は生まれ付いて恋愛感情という物が欠落しているのでな。王都に御滞在をされている、王太后陛下は御存知ではあるが』 私の話に。王太后陛下付きの侍女であるマリアンヌが、恭しく深々と御辞儀をして。 『勿体無い御言葉です。勇者クリストファー・フォン・ソリュード伯爵閣下。王太后陛下には、私の方から御理解を頂けるように書状を書き送っておきますので。どうか御安心下さい』 私の大切な旅の仲間であり、政治面での理解者でもあるマリアンヌには。本当に助けられていますね。 『感謝をする。マリアンヌ』 私の心からの感謝の気持ちを込めた言葉に、マリアンヌは頭を下げて応えてくれました。
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