第三章 ソリュード伯爵領編

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『悪いなクリス。到着した日に、様々な仕事をやらせて』 『いえ、ヨハン。気にしなくて構わないですね。レムリア王国の貴族である領主の義務であると同時に、権利でもありますからね』 聖女カタリナと狩猟神とも合流をして、私が王都に出向いている間、領内の治安維持を担当していたヨハンから。領主である私の裁決が必要な案件の書類を受け取り処理をしていますね。 『この案件は、城館の厨房に納入する食材を積んでいた馬車から、小麦粉を二袋を盗んだ男性に対する処罰ですね。小王国の法律では、この場合の刑罰はどのような物でしたか?』 『縛り首よクリストファー』 …私の質問に答えてくれたマリアンヌの顔を、思わず凝視してしまってから。 『何で小麦粉二袋を盗むと、縛り首なのですか?。マリアンヌ』 マリアンヌは、小王国時代の法律が記された書物の内容を確認してから。 『盗んだ物や量が問題なのでは無くて。城館の主、小王国時代は国王で、今は領主であるクリストファーね。城館の主である主君から、領民が盗んだ事が問題なのよ』 『クリスの懐に手を突っ込んで、財布を盗み出したのと同じ扱いだね』 大陸中を放浪して来た、凄腕の盗賊であるホビーの説明に。私は一応は納得して頷いてから。 『理屈は判りますけれど、幾ら何でも厳しすぎると思うのですけれどね?』 私の感想に、聖女カタリナが大きく頷いて。 『勇者クリストファー様の仰られる通りです!。テルモス子爵領でしたら、罰金刑か、鞭打ち刑で済む罪ですっ』 アルバート・フォン・テルモス子爵の息女として、聖女カタリナは幼い頃から領主であるご父君の裁きを間近で見て来ましたからね。 『でっ、どうするのクリス?。ここで例外を作ると、さっきの話に出て来た。表向きは小王国の歴史と伝統と慣習を尊重する姿勢が、いきなり崩れるけれど』 ドワーフのアニーの問いに、私は思わず執務室の天井を見上げて。 『今後も新しくレムリア王国の領土となった土地で、領主を続けるからには、同様の案件を裁かないといけないですからね…。ヨハン手間を掛けますけれど、この窃盗犯を連れて来てもらえますか?。直接会って事情を聞いてから決める事にしますね』 私の言葉にヨハンは頷いて。 『了解クリス。直ぐに連れて来る』
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