雲アルパカの空返り

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おじさんがそう言うので、僕は素直に紙を戻した。 どっどっどっどっという心臓の音が酷くうるさく、僕は汗だか冷や汗だか分からないものを垂れ流しながら、家に走って帰った。 「タツオ、あんた帰ったなら宿題しんさい」 祖母がそう言ったが、聞こえないふりをして布団に潜り込んだ。 おじさんのことは誰にも言えなかった。 その日の夜に高熱を出した。 熱帯夜の暑さと、自身の高熱でゴロゴロしているとにわかに庭が騒がしくなった。 窓からそっと見ると、たくさんの雲アルパカたちがいた。 雲アルパカたちは揃って空を見上げていた。天頂にはまん丸の月がぽかりと浮かんでいた。 雲アルパカたちは月に向かって首を伸ばした。もう伸びないだろ、というくらい伸ばすと、さらにしゅるしゅるしゅるるとアルパカたちの首が伸びて行った。 もう頭が見えないくらいに伸びきると、身体が半透明になって、ゼリーみたいにふるふる、ふるふると震え、やがてぱしゅんと弾けて消えた。 残ったのは水と、ゼリーのカケラみたいな、クラゲの死体みたいなやつだけだった。 空を見ているとなんだかひんやりとして、眠くなった。 翌朝、熱もすっかり下がって庭に出てみると、なんとなく地面は湿っているような感じはした。 庭に出て来た祖母に昨夜の話をする。     
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