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「貴方を探し出すのが遅れ、本当に申し訳ありませんでした。けれどもこうして再び貴方に出会えた奇跡に感謝いたします。とはいえ貴方をあそこまで苦しめさせてしまったことは、未熟だった私の不徳の致すところ。元より私は貴方に属する者ですが、今回の失態について制裁があれば仰ってください」
淀みなく語られ、カロッサは何が何かわからないながらも、最後の言葉を放った瞬間、自分を見上げてきたアメジストの瞳に、吸い込まれるかと思うほどの何かを感じ、いっとき息すら忘れかけた。だから。
「───おまえ、名前は?」
カロッサの問いにアメジスト色の瞳を持った青年は、あっとばかりに口を塞ぎ、慌ててその手をまた胸の前にクロスさせ、右手で左肩を、左手で右肩を掴み直すと言った。
「失礼しました。私はラソル、と申します」
「……ラソル」
カロッサは彼の名を繰り返したが、全く記憶に思い当たるものはなかった。なので先に彼が語った内容にこそ不思議の焦点を当て、尋ねた。
「おまえは何者だ? なぜ俺にそんな丁重な態度で接してくる? そして───おまえは俺が何者かを知っていてこうして接してきているのだろう? 悪いが俺には全く覚えがないから、どうしたらいいのかわからない」
素直に告白すると、青年───ラソルは少しきょとんとして見せ、それならば、と立ち上がり、再びカロッサの手を取ると、再び寝室へと戻った。そして。
「何をしている!?」
突然、白いコートを床に落とし、貫頭服を脱ぎ出したラソルに、思わずカロッサが叫びをくれるも、ラソルは最初に見せたふわりとした笑みを浮かべたまま、
「大丈夫ですから」
何がだ、と聞き返したい気持ちを押さえるまでもなく、ラソルに差し伸べられ手を誘われるままに取り、ラソルがどさりと自らベッドに背を預け、カロッサの下に収まり、言った。
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