真夜中の堕天

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男は真夜中に目が醒めた。尿意を催していた。男はそれが癖になりかけていることを自覚はしていたが、別段どうということでもなかった。 男は部屋に妙な暗さを感じた。普段であれば真夜中であろうとうっすらと見える室内が、そのときにかぎってなにも見えないのであった。後日の男の調書によれば、瞼には外瞼と内瞼があり、そのうちの内瞼が開いていない感覚であったとある。 男は立ち上がる前に灯りをつけてしまおうと、上半身を起こし、頭上にぶらさがっているであろうベルエンドをまさぐり探した。しかし普段であれば一発で探り当てる筈のベルエンドは、指に掠りもしなかった。 そうしているうちに、尿意を堪えきれなくなり、男は急いで立ち上がり、灯りもつけずに部屋のドアを開けようとした。
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