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「おばーちゃん、おばーちゃん!」
家に着くなりあたしはおばあちゃんに抱きついた。
「どうした、風子」
「今ね、今ね───」
あたしは知らず涙を流しながら、今あったことをおばあちゃんに聞いてもらった。
* * * * *
「それは水子の霊じゃよ」
泣きじゃくりながら話し終えたあたしの背中をさすりながら、おばあちゃんが優しく言った。
「みずこ?」
「母親の腹の中で死んだ赤子のことじゃ」
おばあちゃんの言葉に、あたしはそれって、と言葉を続けた。
「りゅうざんってやつ? あたしのお母さんが死んじゃった……」
おばあちゃんは頷く代わりに、あたしを膝の上に抱き寄せ言った。
「そうさな、風子が見たそれはきっと、風子の弟になるはずの水子だったのかもしれんなぁ」
そうしておばあちゃんはあたしを膝に抱いたまま、『かごめかごめ』は遊女の唄だと教えてくれた。
『籠の中の鳥』とは、自由を奪われている遊女達のことで。
『いついつ出やる』とは、遊女が孕んだ赤子がいつ産まれるかと問うもので。
『夜明けの晩に 鶴と亀が滑った』のは、明け方でもない夜でもないあやかしの時間に、縁起のいいはずの鶴と亀が滑った、だから。
『後ろの正面』というどこにも存在し得ない場所を、覗き見えてしまった者にだけ見えるのだという。
そこに居る水子の霊を───
* * * * *
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