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ホテルまでの道は単純だったので意外に簡単に着いた。
「なんか普通のホテルと外観が違うな……」
チャチい造りの割には西洋の城を中途半端に模しており、アンバランスな雰囲気を醸し出している。
「う、うん、そうだねっ」
そしてミリアは何故か怯んだ顔をしていた。
「入口これだよな」
黒いのれんが掛かっていて関係者入口のようにひっそりしている。本当はヤクザか何かのアジトなんだろうか。
「は、はい、そうだと思います……」
なぜ敬語なんだ。いちいち気にするのも面倒なので放っておく。
「フロントに人がいない……」
人手が足りないのだろうか。
「な、直至くん! このホテルはあのパネルから空いている部屋を選ぶんだよ!」
「へぇ、お前来たことあるのか?」
「いや? う、宇多田くんが言ってた!」
いつのまに仲良くなったんだろう。まぁいいか。
「これでいいか、一番安いし」
俺は適当な部屋のパネルを押そうとする。
「待って直至くん!」
ミリアが慌てて俺を制した。
「その部屋は、お風呂に浴槽がないから、付いてる部屋にしない?」
「そんなのあるのか?」
確かによく見ると横に風呂の写真もあったが、風呂というよりシャワーが付いたカプセルのようである。
「珍妙な風呂があったものだな……」
「あ、あんまり気にしない方がいいよ……」
結局、ミリアが選んだ二番目に安いきちんと浴槽がある部屋を選ぶと、カードキーのようなものが出てきて、エレベーターで部屋に上がった。
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