3章

2/8
前へ
/20ページ
次へ
ホテルまでの道は単純だったので意外に簡単に着いた。 「なんか普通のホテルと外観が違うな……」 チャチい造りの割には西洋の城を中途半端に模しており、アンバランスな雰囲気を醸し出している。 「う、うん、そうだねっ」 そしてミリアは何故か怯んだ顔をしていた。 「入口これだよな」 黒いのれんが掛かっていて関係者入口のようにひっそりしている。本当はヤクザか何かのアジトなんだろうか。 「は、はい、そうだと思います……」 なぜ敬語なんだ。いちいち気にするのも面倒なので放っておく。 「フロントに人がいない……」 人手が足りないのだろうか。 「な、直至くん! このホテルはあのパネルから空いている部屋を選ぶんだよ!」 「へぇ、お前来たことあるのか?」 「いや? う、宇多田くんが言ってた!」 いつのまに仲良くなったんだろう。まぁいいか。 「これでいいか、一番安いし」 俺は適当な部屋のパネルを押そうとする。 「待って直至くん!」 ミリアが慌てて俺を制した。 「その部屋は、お風呂に浴槽がないから、付いてる部屋にしない?」 「そんなのあるのか?」 確かによく見ると横に風呂の写真もあったが、風呂というよりシャワーが付いたカプセルのようである。 「珍妙な風呂があったものだな……」 「あ、あんまり気にしない方がいいよ……」 結局、ミリアが選んだ二番目に安いきちんと浴槽がある部屋を選ぶと、カードキーのようなものが出てきて、エレベーターで部屋に上がった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加