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部屋に入ると、目の前にでかいベッドが鎮座している。
「不思議なホテルだな本当に……」
入った瞬間、電話のコールが鳴った。
「わ、私出るよ!」
ミリアが言う前に近くにいる俺が受話器を取ってしまう。
「もしもし」
「当店にお越しいただきありがとうございます。休憩でご利用なさいますか? 宿泊でご利用なさいますか?」
休憩って何だ?
「宿泊で」
「それでは料金は前払いになりますのでシューターに料金の投入をお願いします」
「すいません、シューターって何ですか?」
「直至くん! わかったって言って!」
ミリアが電話の向こうの声をかき消す勢いで叫ぶ。初めて聞いたぞそんな大声。
「すいません、わかったのでいいです」
「よろしくお願いします」
ロボットがしゃべってるのかと思うくらい無機質な声が電話を切る。
「シューターって何だミリア」
「これ」
ミリアがコーヒーカップが置かれた棚の上にある謎の機械を指す。「料金を入れたらスイッチを押してください」と横に書いてある。
「一万二千円、ミリア二千円持ってるか?」
ミリアが財布を覗く。
「いや、五千円札しかないみたい」
「これお釣り返って来るのか?」
「大丈夫! 来るはずだから!」
ミリアがシューターとやらに一万五千円をねじ込みボタンを押すと、シューターはシュポンと音を立てて吸い込まれた。
「これどこに行くんだ?」
しばらく待っているとシューターは行きよりゆっくりと帰還した。三千円を連れて。
「面白いなぁこれ」
「そうだね、初めて見るけどこんなんなんだ」
ミリアもシューターを眺めながら物珍しそうに呟いた。
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