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「しっかし、疲れたな」
俺はそのままベッドに倒れこむ。朝から動き回ったからさすがにくたびれた。
「な、直至くん」
ミリアが風呂場からタオルを持ってくる。そういえば土砂降りの中歩いて来たから身体が濡れていた。
「あぁ、悪かったな。布団が濡れるな」
俺は寝転がったままタオルを受け取る。するとミリアが何故かしょげた顔をしていることに気付く。
「どうした?」
彼女は重々しく口を開いた。
「直至くん。ごめんね……今日天気悪かったのに、私すごくはしゃいじゃって、また別の日にすれば、ホテルに泊まらなくても帰れたのに」
ショコラオレンジの髪に雫が付いている。俺はもらったタオルで彼女の頭を拭いてやった。彼女が「うわ?」と声を上げる。
「……お前楽しそうにしてたなぁ。言っちゃ悪いがあんなオンボロ水族館で目ぇキラキラさせて」
スタッフもさぞ喜んだことだろう。
「うん、楽しかった」
ミリアは控えめに頷く。
「まぁ、連れて来てよかったよ……なかなかいいものが見れた」
俺も別の日にしようとは、ハナから思っちゃいなかった。彼女が楽しそうにしている姿が見てみたいと、少し思っていたから。
俺が彼女の頭を拭いていると、彼女ははにかんだ笑顔で言う。
「私も、来てよかったよ……直至くんが笑った顔、初めて見た」
俺は目を丸くする。
「初めて?」
「初めてだよ」
自分の表情をさして意識したことはないが、俺はそんなに愛想が無いのだろうか。
「あんまり、他の人に見せないでね」
彼女は冗談めかして笑う。
「無茶を言うな」
俺は彼女の頭からタオルを取り、そのまま自分の頭を拭いた。
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