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「直至ぃぃぃ! これ貰ってくれぇぇぇ!」
初夏の昼下がり宇多田が半泣きで俺に二枚の紙を押し付ける。ただでさえ蒸し暑いのにじめじめしやがって。
「何だよこれ」
俺は言いながらそれを摘まむ。イルカの絵が描いてあった。
「水族館のチケットか……? 自分で行きゃいいじゃないか」
「行けなくなったんだよ! 相手が行かないって言ったんだから!」
「誰を誘ったんだよ」
「チェス同好会の新入生の温品さん。彼氏いるんだってさー」
「何で約束する前に買ったんだよ……」
俺はため息をついて嘆きの表情を浮かべた宇多田を眺める。ちょっと可哀想だな。
「俺が一緒に行ってやろうか?」
「これカップル割引きなんだよ!」
じゃあ仲睦まじい釘宮と西岡にでもやればいいのに。
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