4章

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俺は帰りの電車に揺られながら、傍らの同居人を眺める。朝までぐっすり寝ていた癖に、電車に乗った途端すやすや寝息を立て始めてしまった。まぁ、昨日相当はしゃいでいたから無理もない。 「!」 俺の肩に、こてんと彼女の頭が乗る。彼女の息が首筋に当たってくすぐったい。 「……重いぞ、ミリア」 一応言ってみるが、俺の声は届いてないらしい。 「本当に寝ているんだろうな……?」 返事はない。起きているのかもしれないが……気にするのはよそう。 「……楽しかったな」 聞こえているかはわからない。俺は無防備な彼女の横で微笑む。 ショコラオレンジの髪が俺の目線に垂れ下がり、柑橘の香りがふわりと風に乗る。 そろそろ、期末テストだな。それが終わると夏休み。 暑い夏が、やって来る。
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