2章

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電車に揺られて一時間、そこから歩いて二十分、水族館に着く頃には俺はクタクタだった。しかしミリアはやたら元気に俺を先導する。建物は日焼けしたままだしイルカのペイントも半透明化していて明らかにさびれているが彼女は気にならないようだ。 「直至くん! 着いた!」 「見たらわかる」 「行こっ」 ミリアが俺の腕を引っ張って入口に走る。普段コイツこんなに落ち着きがなかっただろうか。 受付のオヤジがいつもの10倍瞳を輝かせているミリアを見て鼻の下を伸ばしている。彼女の後ろから俺が顔を出し、カップル割引きのチケットを出すと、明らかにぶすくれた顔をした。 「……カップル割引きでー、1200円ね」 「ありがとうございます!」 「……どうも」 オヤジはミリアにだけ笑顔を返して俺たちを見送った。
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