2章

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「わー、クマノミだー、かわいいねー」 ミリアは水槽を覗きながら「かわいい」を連発している。イワシの大群だろうがチョウチンアンコウだろうが言っている。今日はワカメでもかわいいと言うんじゃないか。 「前見て歩かねえと転ぶぞ」 なんだかカップルと言うよりも保護者になった気分だ。 「ねぇ直至くん! タッチングプールだって! 触れるよ! 魚に!」 「ヒトデとかナマコだろ?」 俺はその辺の子供に混じってタッチングプールに入って行くミリアを追いかける。 「うわぁナマコ気持ちいい、フニフニするー」 大の大人がナマコを触って喜んでいる姿はなかなか滑稽だ。 「……ははっ!」 ミリアが俺を凝視した。まるで信じられない光景を目にしたかのような目で。 「……え、直至くん今、笑……?」 「だって、お前いい年した女がナマコ触ってそんな喜んでたら、笑いたくも……はははっ!」 駄目だ、止まらない。俺は気が済むまで腹を抱えて笑い続ける。 「わ、笑い過ぎじゃないの……?」 ミリアは顔を赤く染めてナマコから手を離した。 「もういいのか? ナマコは」 「いい!」 ミリアは近くの洗面台で手を洗ってそのまま俺の顔を触る。 「つめたっ!」 俺が叫ぶとミリアはむくれ気味の顔でそのまま先に進んで行った。
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