17人が本棚に入れています
本棚に追加
「わー、クマノミだー、かわいいねー」
ミリアは水槽を覗きながら「かわいい」を連発している。イワシの大群だろうがチョウチンアンコウだろうが言っている。今日はワカメでもかわいいと言うんじゃないか。
「前見て歩かねえと転ぶぞ」
なんだかカップルと言うよりも保護者になった気分だ。
「ねぇ直至くん! タッチングプールだって! 触れるよ! 魚に!」
「ヒトデとかナマコだろ?」
俺はその辺の子供に混じってタッチングプールに入って行くミリアを追いかける。
「うわぁナマコ気持ちいい、フニフニするー」
大の大人がナマコを触って喜んでいる姿はなかなか滑稽だ。
「……ははっ!」
ミリアが俺を凝視した。まるで信じられない光景を目にしたかのような目で。
「……え、直至くん今、笑……?」
「だって、お前いい年した女がナマコ触ってそんな喜んでたら、笑いたくも……はははっ!」
駄目だ、止まらない。俺は気が済むまで腹を抱えて笑い続ける。
「わ、笑い過ぎじゃないの……?」
ミリアは顔を赤く染めてナマコから手を離した。
「もういいのか? ナマコは」
「いい!」
ミリアは近くの洗面台で手を洗ってそのまま俺の顔を触る。
「つめたっ!」
俺が叫ぶとミリアはむくれ気味の顔でそのまま先に進んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!