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腹が減ったと思えばもう2時を廻っていた。
「ミリア、メシにしよう」
ミリアがイルカショーに一目散に向かおうとしていたので俺は慌てて止める。
「ん? あ、そうだねもうこんな時間!」
「1階にレストランがあったろ」
勝手にどっかに行かれては敵わないのでミリアの手を握ってそのまま引くと、存外に彼女は大人しく付いてきた。
ウエイトレスに席に案内されてメニューを見る。さびれてる割にはやたらとファンシーな見た目の料理が揃っている。
「お前これ食ったらいいんじゃねーか? 『イルカさんのわくわく常夏カレー』」
「直至くんこれお子様用メニューじゃん!」
「好きそうじゃねーか」
「可愛ければいい訳じゃないの!」
流石に白飯がイルカの形に盛られて旗が刺さったプリンが備え付いたカレーは食べないらしい。結局普通のオムライスを頼んで食べていた。
「……写真とか撮らないんだな」
ミリアは普通にオムライスの山を崩す。
「え? 何で?」
「女ってやたらめったら食べ物の写真撮るだろ。ツイッターかなんかにアップすんのか知らんが」
一年生なんか学食のランチすら撮影してる奴もいるくらいだ。
「あー、私はあんまり撮らないなぁ……」
ミリアはおもむろにスマホを手に取り、俺にそれをかざす。
「あ?!」
シャッターの音が鳴る。
「待て! 今俺を撮っただろ!」
ミリアは画面を見て満足そうに微笑んだ。
「大丈夫。かっこよく撮れたよ」
「知らん! 消せ!」
「ふふ。やーだ」
ミリアはスマホを大事そうに抱き締めるので俺は抵抗を諦める。ひょっとすると朝酒の一杯でも飲んできたのかもしれない。
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