第六話 遺書教室

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 と、心配していた矢先、冴内くんはネクタイでハチマキをし始めた!  ぐでんぐでんどころか、何だかご陽気だ。  ちょうどその頃、宴会場のステージでは、定年間際の中村部長が、星野源さんの『恋』を歌い始めた。    すると、ネクタイハチマキをした総務部の若手何人かが『恋ダンス』を踊り出し、みんなが手拍子で盛り上がり始めた。  冴内くんが、タイミングを見計らって、 「よっ! 中村屋ッ!」  と、合いの手を放つと、会場がドッと沸いた!  今度は、これまた定年間際の成田部長が、中村部長に負けじと、荻野目洋子さんの『ダンシング・ヒーロー』を歌い始めた。  すると今度は、ネクタイハチマキをした営業部の若手何人かが、大阪府立登美丘高等学校(おおさかふりつとみおかこうとうがっこう)ダンス部で有名になった『バブリーダンス』を踊り始め、これまた会場が大いに盛り上がった。  冴内くんは、再び、絶妙のタイミングを見計らい、 「よっ! 成田屋ッ!」  と、合いの手を放ち、これまた会場を、ドッと沸かせた!  何だか分からないが、今日の冴内くんはノリノリだった。  冴内くんに、何か悩んでいるのか、それとなく聞いてやってくれと頼んでいた課長は、スッカリできあがって、ぐでんぐでんのベロンベロンだった。  なので、僕は瓶ビール片手に冴内くんの横へ向かい、話し掛けることにした。     
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