第六話 遺書教室

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「その看板の横を通って、僕がそのビルに入って行くところを、誰か見て、そんな噂が立っちゃったのかな~?! ハッハッハ!」 「あ、そうなんだ~! で、そのビルの何の教室に通ってるの?」 「ハッハッハ! 言わないでよ~!」 「言わない言わない」 「『遺書教室』じゃなくて~、『よいしょ教室』なんだよ! ハッハッハ!」 「よいしょ教室?!」 「そうなんだよ! 僕さ、口下手(くちべた)じゃん!」 「ま、まぁ、そうかな」 「それで何かスキルアップしたいな~って、探してたら、そんな教室見つけたの!」 「へぇ~」 「昭和の高度経済成長を支えた、団塊の世代のおじさんたちが講師の先生でね」 「へぇ~」 「昭和の飲みニケーションの場で培われた『よいしょ文化』のいいところだけを、おもしろおかしく伝承していこうって教室なのよ」 「へぇ~」  何だか『へぇ~』ってボタンがあったら、バンバン叩きたくなった。 「『よいしょ教室』は、そのビルの『五階』でやってるだけに、『誤解』、が生じたのかな~! なんちゃって! ハハハハハ~!」  昭和のおじさんたちから、真面目に学んでいるらしく、平成生まれの冴内くんが、スッカリ昭和のダジャレ親父に見えてきた。  きっとこの宴会がお開きになる頃、冴内くんは、 「それじゃ、あたしゃ、この辺で、ドロン! いたしやす!」     
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