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気になるあいつはラーメン大好き。
そのお客様は平日の2時に絶対に店に来てくれていた。遅くとも3時までには絶対に来るのだ。あたしがこのラーメンチェーン店でアルバイトを始めて数ヶ月が経過したところでそのお客様は店に来るようになった。そのお客様はそれと言って特徴の無い平々凡々とした男であった。服装は至って普通の私服であることから営業周りのサラリーマンや1時ぐらいに仕事が終わり昼食を取りに来る訳でも無いようだった。大学生かなとも思ったのだが決まって手ぶらなのだ、ルーズリーフや筆記用具を持っている様子が見えない事から大学生と言う線も外れた。
あたしと同じシフトの同僚達は「きっとあれニートよ、気持ち悪い」と、悪く言うが、あたしはお客様に対してはこのような事は言ってはならないと思い、この話に入る事は無かった。
彼はいつも中華そばに餃子のセットを頼んでいた。この店は昔ながらの中華そば、味噌ラーメン、塩ラーメン、とんこつラーメン、担々麺を取り揃えているが彼は中華そば以外の麺類には目もくれることは無かった。季節ごとに尾道ラーメンやカレーラーメンや魚醤ラーメンなどが発売されることがあってもやはり中華そばしか頼まなかった。
あたしは平日の開店から夕方のみのパートなので彼に絶対に会うことになった。他の同僚達は「気持ちの悪いニート」と決めつけていたので彼の接客はあまりしたくないようだった。それ故にいつの間にか彼をあたしが担当をすることになっていた。
このようなパート生活が数ヶ月続いたあたりであたしは彼に愛着を覚えるようになっていた。年齢もあたしのようなおばちゃんとは全然違うし、普通に生きていれば一生関わる事は無いだろう。
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