ラーメン

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 彼が来なくなってから約一ヶ月、9月になりアキアカネが飛び回る時期になっていた。夏休みも終わりいつもの様に暇な2時から3時になっていた。そんなある日、店長からクビを通告された。「明日から来なくていい」と言う訳では無くクビ一ヶ月前の通告前であった。理由を問いただしても「本部からの命令」としか言われなかった。結局、一ヶ月何が悪いのか分からずに最後の一ヶ月を勤め上げる事しか出来なかった。  最後の勤務日の夜、帰宅して旦那に現状を愚痴ってみた。旦那はあっけらかんとしていた「別にお前が働く必要も無いし、これからはのんびりしたらどうだ」と、言うのでこれからは主婦業に集中することにした。旦那に酌をしている際にテレビで流れていた経済番組であたしが勤めていたラーメンチェーン店の特集をしていた。胸糞が悪いので別のチャンネルにしようとしたところ、液晶の向こうに居た顔を見てあたしは大層驚いた、彼が映っていたのだ。いつもの服装と違ってちゃんとした背広を纏っていたのだった。 「社長のラーメンチェーン店に対する経営に対するこだわりはなんでしょうか」 経済番組の司会が彼に問いかけた。彼は落ち着いた口調で答えた。 「いつも同じ味がそこにあることですね。店舗ごとに味が違うって言うのはありますけど、同じ店舗なのに味が変わったらおかしいじゃないですか」 「そうですね、だからこの様にマニュアルを守ることを厳命している訳ですね」 「はい、メンマの数やチャーシューの枚数すらもキチンと管理しています。大衆食堂のオマケとかよくあるじゃないですか。あれって不平等だと思うんですよね。人によって量が違ったら駄目だと思うんですよ。私の自宅近くにある店舗はほぼ毎日看板商品の中華そばは味や量をチェックしていましたよ」 あたしはこれを聞いてテレビを切った。あたしはあたしなりに彼を思ってやった事だったこんな風に言われて悲しくなっていた。 「潰れちまえばーか」 あたしはこう心の中で叫んだが、ラーメンチェーン店はこれまでと同じ様に潰れる事無く勢力を伸ばしているのだった。 全く、潰れて欲しいところに限って潰れないものだな。あたしはため息をついた。                                                                       おわり
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