01 始まり

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01 始まり

「――なんだか、山を越えてからずっとジメジメしっぱなしじゃない……?」  黒々としたスーツを身に纏う男と、白い帽子に灰色のワンピースを着た少女。共通点のなさそうな二人が、それぞれ手荷物を持って荒れた平地を歩き続けていた。 「そりゃあ、目的の街が近いからだろうさ。例の“雨の街”だ」  男が懐から手帳を取り出すと、少女が腕の内側に入るようにして中を覗き込む。まるで親子のような仕草なのだが、男は嫌がるように眉を顰めていた。 「出た出た、アベルの“なんでも手帳”」 「リィン、勝手に覗くな。目を灼くぞ」  ばっと手の届かない高さへと持ち上げられた手帳に書かれていたのは、二人が目的地にしている街についての情報だった。
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