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二人が町を訪れていた頃には日が傾き始めていた。しばらく歩き、夕暮れに染まる街並みの中で『ここにはちゃんと朝と夜がある』と話をしながら、二人は滞在に使う宿を探す。が、数が少ないという規模の話ではなく、肝心の宿が見つからない。
通常ならば他の場所から訪れた者の為に、街の入り口付近に宿を置いているのが基本である。にも関わらず施設が置かれていないというのは、閉鎖的ということに他ならなかった。
「……まさか街の中で野宿するなんて言わないよね。アベル」
「…………」
アベルが建物の屋根近くを見上げると、監視カメラがあった。一つや二つなどではない。街の中に死角がないほどに、カメラがあちこちに点在している。……例の規則の為だろうと溜め息を吐くアベル。
建物の影で直接地べたに寝た結果、ゴミとして認識されるなんて。まさかそんなことで死罪になることはないだろう。
それでも少なくとも――自分達は歓迎されてはいないだろうな。と、アベルは黙ったまま眉を顰めるのだった。
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