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03 拠点
二人が宿にありついた、それから一時間ほど歩いた後のことだった。
まだ街の半分程度しか動いていないと考えれば、運が良かったのか。
あまりに殺風景な街だったこともある。リィンが疲弊を露わにしてきたところで、仕方なくアベルが通行人に道を尋ね、ようやく見つかったのだった。
道行く人に聞いても、『ホテルなんてあったかなぁ』と首を傾げる者ばかり。同じ街に住んでいるのならば、基本宿など使う目的もないだろう。その中で、いかにも品のなさそうな男が、にやけ顔で進めたのがそのホテルだった。
街の外れ、周りには空き地が多く、駐車場が四、五台程度。利用者も殆どいないためか、外装は汚れており、看板の電球は所々でフィラメントが切れ、その光を失っている。
「ここって……」
リィンですらピンと来るものがあったのか、言葉を濁す。
――ホテルはホテルでも、ラブホテルだった。
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