星との会合

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 重たい望遠鏡をベランダに設置するのは、今年入ってはじめてのことだった。 時刻は真夜中2時を回った。 今日は冬の流れ星、ベルセウス座流星群が見れる日だ。肉眼でも見えるその星々はたしかに美しいが、私は望遠鏡を覗いてみるベルセウス座周辺.....流れ星の発生する辺りが最も美しいと思うのだ。  ところがそれは、長いマフラーの端を肩に回し、もうちらちらと流れている星々たちを覗き見ようと望遠鏡に手をかけたところにやってきた。 ベランダから振り返り、直線上にあるその玄関の扉からはコンコンと誰かがノックをする音が聞こえる。 「ごめんくださいな」  時刻は真夜中2時、こんな時間に誰が起きて誰が人の家の扉をノックするのか。そのしゃがれた女性の声は想像するに、歳をとった女性の声だと思うが、その具体的な想像がさらに私を震え上がらせた。  私はふらふらとした足取りで、依然ノックと挨拶を続ける扉に近づいていった。幽霊なんてものはいない、オバケなんてないさと懐かしい童謡を頭の中で繰り返しながら、もし相手が徘徊老人や痴呆老人であったらどうするかと一部冷静さを保ちつつ、ゆっくりと玄関の扉を開いた。
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