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梅雨に開けた初夏のこの時期。
いつも僕は持ち主の隣にいる。
持ち主は今日も僕を片手に路線を進む。
着けば僕はひとまず休憩。
夏に初めて買ってくれた持ち主のことをまだ何も知らない。
知っていることと言えば…
帰るとき、外に出ていないはずなのに濡れていること。
今日も、明日も、明後日も……
ある時、持ち主はサボり公園にたたずんでいた。
見えるのは浮かれない視線。
沈んだ何か。
雨の日はうれしい。
外に出られるから。
だけど今日は………
持ち主が立ち尽くしていると
向こうから駆けてくる女性が見える。
持ち主が何を考えているかはわからない。
持ち主は駆けだした。
僕の下にいるのが二人になった。
持ち主は久々の笑顔を僕に見せてくれた。
女性と喋っている持ち主の顔には怒られているのに笑顔が。
持ち主は公園の真ん中まで女性と歩調をあゆんだ。
着いたとき今ここに持ち主の中心があるように感じた。
僕にはわからない。知ろうとも理解しようとも思わない。
ただ二人の思いが結び付き交わったとき
僕は100の風となり空に消えた。
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