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ガラガラと教室の戸を開けると、2ーAの教室には、予想していた通り、今日も誰も来ていなかった。
米津君以外は。
2ーAどころか、全学年、本当に片手で足りるくらいしか来てないんだろう。
先生だって、来ているのはほんの一握りだ。
そんな米津君は、私の隣りの席だ。
米津賢人。2年生に上がってから、同じクラスになった男子。
髪はパーマをかけてるんだか天然パーマをかけてるんだか分からない。とにかく、ボサボサ系と言ってしまえば話は早い。
前髪が異常に長めで、目がほぼ見えない。
最初見た時、モップのように毛が長い犬みたいだと思った。
そして、黒縁メガネをかけて、常にマスク着用。
なので、顔のつくりがほとんど分からない有り様だ。
背は高めで、体型は割と良い方だと思うけど、猫背っぽいところがザンネンなところ。
声はあんまりはっきりと聞いたことがない。
何を言ってるのか分からないくらいに、低めの声でボソボソと話しているのを聞くぐらいだ。
休み時間は大体音楽を聞きながら、何かの本を読んでいる。たまにノートに何か書いたりもしているみたい。
私としては、感覚的に見た目もその雰囲気も受け入れがたいものがあったので、特に会話することもなく。
今までは只のクラスメートとして、ひたすら並んで座っているだけの間柄だった。
でも、私は今日突然、その関係を変えようとしている。
それは、世界が終わる前に。
たとえ疑似でも。
相手が少し……いや大分オタクっぽいような。
あるいは、多少不審者っぽいように見える相手でも?
それでも良いから。
叶えておきたい夢が、私にはあるから。
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