溶ける溶けない

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余計な思考が頭を弛緩させて、手にした小説は既に栞を挟んで閉じられている。 まるで怨霊のような負のオーラを醸し出している先輩に、恐らく聞こえないであろう長息をつく。 「先輩、突っ伏してると余計に熱くなりますよ」 「あづいぃ......」 「これは手がつけられないっぽいね、セン」 左隣では椅子の背もたれに体重をかけている広太が、しかないと言わんばかりに肩をすくめた。 窓側に座り、一番太陽光を浴びているはずだが一番涼しい顔をしている。 「お前は暑くないのか」 「僕? 暑いに決まってるさ!」 途端、広太は人が変わったように嘆き始め先輩と同じく机に突っ伏してしまった。 どうやらこの時間をずっと痩せ我慢で乗り切っていたようだ。 おめおめと豹変する広太に冷ややかな視線を送りながら、額に浮かんでいた汗を拭う。 たしかに、エアコンの一つもない多目的室でわざわざ放課後を過ごしているのは謎だ。 申し訳程度に扇風機は取り付けられているものの、あまり効果は果たせていない。 この謎を今日の議題にしようものなら『部活存続のため』で結論付けられるのだろう。 最初から決まり切った論争は非生産すぎて、暑さを過密させるにすぎない。
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