もういいかい? もういいよ。

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 男はもう何歳になったのだろう。  大学に合格してから現在に至るまで、彼はずっとこの北国で暮らしている。祖母の家は一人では少し広すぎるけれど、その寂しさにももう慣れた。  男は卒業した後も研究員として大学に残り、取り憑かれたようこの辺りの郷土史と民俗学を調べ続けている。かつての同級生たちの多くが結婚し、子供を産み育てているのに比べ、彼の毎日は実に簡素なものだ。マラソンでひとり置いていかれるような焦りと不安。気を抜けば一気に窒息死してしまいそう。  そんな時、ふと思う。  どうして自分はこの大学を受験したのだろう、と。  何かとても大切なことがあったはずだ。けれど、どうしても思い出せない。  それがとても悲しい。
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