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「別に何も特別な事する訳やなくって、ただただ集まって、京都の事をいっぱい知ろうって、そんだけ。気ままに集まりたいときに集まって、お寺さん見たり、図書館で本読んだり、体験ものに挑戦してみたり、そういう事すんねん。ま、要は遊び! もちろん、会費も強制もなし。入会やったら、いつでも歓迎すんで!」
ひとしきり話したところで、塔太郎は彼女を見つめた。
昔ながらの少年のような、柔らかい瞳の塔太郎に対して、彼女の瞳はまるで黒曜石のように凛としている。
「なるほど、京都中を巡るクラブですか……」
彼女は、チラシをテーブルの端へ静かに置いた。
「俺も玉木も運転できるし、車で市外も行けんで!」
「他にメンバーはいないんですか?」
「まだ作ったばっかりやねん。やし、これから新しい人も来るんかもしれんし、女の子もきっと来はんで! もし欲しいって言うんやったら、探すし!」
「そうですか……」
そう言って数秒、彼女は目を伏せた。何かを考えているらしい。
塔太郎はこれを好意的に見て、チラシを見たうえに質問したところから、体験入部します、ぐらいは言ってくれるかも、と期待した。
ところが、そう思わせた言動とは裏腹に、彼女は無表情だった。
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