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「な、何でしょうか」
彼女の肩がぴくんと跳ねた。
「自分、やっぱりこのクラブ入ってみいひん?」
「えっ!?」
決意したような塔太郎の笑顔に、傍観している玉木が「全く、この人は」と苦笑いする。彼女はそれこそ驚いた。
「私、京都嫌いやって言ったじゃないですか」
「うん、それは聞いた」
でもな、と塔太郎は続けた。
「確かに京都はイケズっていうけど、きっと理由があると思うねん。千年の間に培われた深い理由が。やから、京都の人はほんまは意地悪なんかとちゃう。沢山京都と付き合っていったら、きっとその理由……ほんまの京都が見えると思うねん。京都も絶対、人に優しいし、そういう心はまだ残ってるって信じたい。それを、俺らと一緒に探してみいひん?」
まるでプロポーズのような言い方になったが、構わなかった。自分だけでなく、彼女とも一緒に、京都の汚名返上の旅をしてみたかった。
「……京都の色んな所を巡って、京都の色んな事を体験してですか」
「そう!」
塔太郎は頷いた。
「どうして、そこまで熱心なんですか」
「好きやから!」
即答する。単純な答え方に彼女は虚をつかれてぽかんとしていたが、店の窓から広がる景色に目をやってから、塔太郎の瞳と対峙した。
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