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「ほんまに、私を京都好きにさせる自信がありますか?」
「ある!」
「私、京都の事、結構知ってますよ?」
彼女のいたずらな挑発に、大丈夫ですよ、と買ったのは玉木だった。
「だって、塔太郎さんの父親は京都市長なんですから」
その瞬間、彼女は、うそ、という風に顔を上げた。
「京都市長って、今の、坂本武則ですか?」
「はい。塔太郎さんはその長男です。お父さんは市長になりましたけど、もともとはお祖父さん以前から祇園祭の囃子方を勤める三代以上の家系です。素人どころじゃないですよ」
「ちょ、お前それ言うなって!」
大慌てで止めた塔太郎だったが、遅かった。
彼女は一本取られたような恥ずかしさに、みるみる顔を真っ赤にする。
「この……いけず! 自分こそほんまの京都人やん! 何で言うてくれへんかったん!? ほんまの事を隠して、心の中で笑ってたんですか!?」
やにわに怒りだす彼女。塔太郎は真っ向から否定した。
「ちゃうねん、ちゃうねん! 親父とはだいぶ前に喧嘩したっきりやし、おじいちゃんらはそうでも、俺は囃子方ちゃうねんて! 俺自身は普通の一般人やし、親の事を自分から言うとか、自慢みたいで嫌やん」
「そういう謙虚さ何か知りませんけど、知らずに自分は堺町二条とか言うてた私があほじゃないですか! もう、京都人ってほんっま、そういうところありますよね!」
「えーっ? 自分も京都人やん!」
わざとらしくため息をつく彼女に、塔太郎は必死に弁明した。
このまま彼女が怒って帰らないかと心配だったが、逆に彼女は、チラシを手にして塔太郎の前へと突き出した。
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