京の都に恋をして

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京都、三条通り。鴨川よりも少し東の、紅葉の街路樹が綺麗な通り沿い。 閑散とした時間帯で誰もいない喫茶店の中、店内の隅のテーブルで休憩を取っていたウェイターの坂本塔太郎は、何気に開いた雑誌の一ページに目を留めて、みるみる血の気が引いた。 「あ……あり得へん!」 椅子から立ち上がり、向かい側の席で同じく休憩中でイヤホンで音楽を聴いている後輩、玉木の肩を揺すった。 「おい玉木!見ろ、これ!やばい!」 「何ですか。祇園東の美々佳ちゃんがとうとう襟替えするんですか」 「何言うてんねんこの舞妓はんオタク! ちゃうわ! ランキングの結果がやばいねん!」 塔太郎は雑誌を突き出して特集の記事をぱんぱんと叩いた。その気迫に、玉木はイヤホンを外してテーブルの珈琲がこぼれないよう自分の方へ避難させてから覗き込み、 「人に優しい都道府県ランキング…………あ、京都が47位。妥当ですね」 「うそやん!? 何が妥当やねん!」 と、京都の中心地で生まれ育った塔太郎は心底納得がいかないように頭を抱えた。
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