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その雑誌に書かれていたのは、都道府県を様々な分野からランキングにした特集記事だった。
観光、学問、グルメなどあらゆるものがぎっしり47位まで並んでいて、その中で京都はあまたの一位と輝いていたが、その王座から一転、底辺となっていたのが、「人に優しい都道府県ランキング」であった。
「俺の地元が、意地悪の汚名を着せられるなんて……!」
「何ですその大袈裟なムンクの真似は。別に今に始まった事じゃなく、京都はイケズって言うじゃないですか。顔は笑顔でも……みたいな。プライドが高くて負けず嫌い、拳よりも家柄や皮肉で勝負って、本にも書いてありましたよ」
「それは書いた奴のの性格が悪いねん!」
塔太郎は振り払うように、首を横に降る。
「そんな事ないねん! よくイケズとかどったら言われるけど、京都の人はほんまはみんないい人なんやって! 誇り高いから不器用なだけ! 俺、京都に生まれ育ったけど、性格悪い人におうた事一回もないで!」
その雄弁に、嘘だぁ、と言う目で、玉木はイスの背もたれへと体を預ける。
「それはあなたがガチの京都人だからでしょ。僕みたいな他府県から来たヨソサン、には、京都の人って厳しいんですよ。僕なんか、何回出待ちのお写真お断りでぇーす! って言われたことか……」
「いやそれは関係ないやろ。つーか、舞妓さんの出待ちすんやな」
「だって、それしか舞妓さんの写真撮る瞬間がないんですよ。あんなに可愛らしいなりして夜の花街にしか現れないなんてポケモンもいいところです。何ボールならゲット出来るんですか、金ですか、諭吉モンスターボールですか!」
「お、おぅ……何かすまん、玉木、ちょっと落ち着け」
いつの間にか自分の方が熱っぽいのを自覚した玉木は、やがて気まずそうに塔太郎から目をそらして、珈琲を一気飲みした。
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