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「落ち着いた?」
「ええ。どうもすみませんでした。……まぁ、いいじゃないんですか? 別に。他のジャンルは憎らしいくらい一位を取ってるんですし、田舎育ちの僕からしたら地元がそんななんて、羨ましい限りですよ」
「うーん、そうなんやけどなぁ……」
冷静な玉木の言葉に、塔太郎は渋々雑誌をテーブルに置いて、椅子に座り直した。店内には洋楽、女性の軽やかな歌声が、ピアノと一緒に聴こえてくる。
艶のある板目模様のテーブルに肘をついて、塔太郎は残りの休憩時感を過ごそうとぼんやり店内を見回した。
が、心は全く、穏やかにならない。
雑誌のランキングを通して突きつけられた、世間の認識。自分にとってここが最高の地元と信じきっていた塔太郎にとって、これはまるで張り手を食らわされたに等しい。
塔太郎は、京都市中京区、千本三条の生まれである。地域こそ京都の中心地ではあるが、雅というよりは近くに三条会商店街があるせいか、人情に溢れ、優しい庶民の町である。
行き交う子供を乗せたママさんの自転車、油の跳ねる音が絶えない昔ながらのコロッケ屋、常にイベントを催して活性化に頑張る商店街。そのすぐ近くでは学校帰りの小学生が笑い合い、夏にはがっしりとした三若神輿会の男衆が、八坂神社の神輿を担いで「ホイット、ホイット!」と闊歩する。それを、地元、観光の人関係なく、皆で肩寄せ合って眺める。
こう話すと、決まってみんな、「京都でもそんなとこあるんだね」と驚く。
確かに祇園のような世界があるのは百も五百も承知だが、塔太郎にとっては、寺社仏閣や二条城などどんなに名所が身近にあっても、そういう垣根のないような明朗さと人情が、塔太郎の知る地元、「京都」であった。
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