京の都に恋をして

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「……ひょっとして、京都が地元?」 「堺町二条を上がったところです。一応、江戸時代末期からずっと周辺に住んでいます。うちのお仏壇の過去帳にもそう書いてあります」 彼女は言い切った。堺町二条とは京都市の地名、堺町通りと二条通りの交差点辺りの事で、誰もが洛中と認める上流住宅街である。 堺町二条はすぐ北に京都御所があるので、そこに三代以上住んでいる人は、名実ともに京都人と言えた。 「塔太郎さんと同じじゃないですか!」 玉木が感嘆した。しかし、塔太郎はすぐに訂正する。 「同じ中京区やけど、俺は千本三条。庶民中の庶民や」 「でも、塔太郎さんは……」 「もうええやん、俺の事は」 手を振って玉木を黙らせてから、塔太郎はもう一度、出身が近いこと同士に目を丸くする彼女へと向き合った。
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