1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
日常の違和感
ベッドの横の目覚まし時計がジリジリと音を立てた。
俺は目覚まし時計のスイッチを押して音を止め、ベッドから起き上がり背伸びをした。
部屋のカレンダーを見ると今日の日付に赤いペンで丸の印が書かれている。
今日は2067年4月6日……夢である教師として第一歩前進できる日。
俺は部屋にかかったスーツに着替えると一階へ降りた。リビングに行くと母さんが朝食を作っていた。母さんは俺を見るとニッコリと笑って言った。
母さん「おはよう明(あきら)もうスーツに着替えたの?」
明「うん。少し早めに着こうと思って。」
母さん「そう。」
明「ねぇ母さん?俺のカバン知らない?」
母さん「カバンなら奥の部屋にあるわよ。」
明「そっか………ありがとう」
母さん「ねぇ明……」
明「ん?何?」
母さん「今日から一応教育実習とは言えみんなの先生になるんだから、自分の事を俺って言うのはやめなさい!」
明「え?」
母さん「大人なら自分の事は私って言うものなのよ!」
明「………あぁ……わかったよ。」
母さん「わかったなら宜しい。」
それから明は朝食を食べて準備支度をした。カバンを持ちぎこちないスーツ姿で玄関を出た。
明「はー母さんも少し生真面目だな……自分の事を私だなんて……やっぱり俺は俺だよ!」
普段は車を使うが地元の高校で近かった為、歩いて行く事にした。
それにしても地元を歩くのは久しぶりだ。大学は実家から離れた所に入学した。全寮制の為に約2年は実家に帰って来ていなかった。この高校までの道を歩くのは高校の卒業式以来だと思う。
歩いていると日常の光景が広がっている。おばあちゃんは横断歩道で信号が変わるのを待っている。女子中学生達はおしゃべりをしながら登校している。自転車に乗ったお母さんは我が子を幼稚園に送っている。
その平凡に見える日常は決して平凡何かじゃなかった。
最初のコメントを投稿しよう!