ふたり

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ふたり

私は彼の燃えるように輝く赤髪が好きだったので、彼をグレーと呼んでいた。本当の名前もあるが私はいつもグレーと呼んだ。 私とグレーは海沿いの鉄道が走る町に生まれた。小さい病院でお互いの産声を聴きながら生まれたものだから、両方の父と母はすっかり意気投合して名前もお互いの親がつけた。私の名前はエイクで、彼の名前はダラダラ長い読みにくい名前であったから、略して三文字で皆んなが呼んだ。あとから聞いたらその略が嫌いだっていうから、私は彼をグレーと呼んでた。 グレーの口癖は「大人はばか」だった。町の小学校では幼稚園レベルのことしか教えないし、それもしかたないけど。グレーは2歳でペラペラ難しい言葉を話して、5歳にもなると私のお世話をしていた。同い年なのに。大人も読まない法律の本を何冊も音読したのを聞いていたから、私もそこそこ頭が良かった。グレーは特別だったけど。 その頃国は、隣の国との和平にヒビが入りかけてピリッとしていた。あとでグレーが「ばか中のばか」と大人を罵ったのは仕方がない。 戦争が始まった理由は、「天国を信じる」うちの国と、「地獄を信じる」向こうの宗教的な戦争だったから。     
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