ふたり

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国の外れの美しく広大な丘のてっぺんに、エイクは埋葬された。世界一立派で美しく、頑丈な岩で作ったお陰で、1000年はビクともしないだろうと新聞記者は言った。 隣りには私の墓もあった。どちらかだけが崩れ落ちたりしないように、大きな岩から2つ繋げて掘り出したものであった。 それは新しい国の観光地として今後何百年も親しまれるだろう。そうしたら私もエイクもふたり寂しくはないだろうと思った。 それから私は少し考えて、『私が入ったら暮石には一つの名前だけを刻め』と王に頼んだ。 80回目の建国記念式典の日の朝、孫が言った。私は大きな安楽椅子に寝て、右手を彼と繋いでいた。 「地獄も天国も、本当はなくて、死んだらこの世を彷徨うだけだとしたら、怖いね。」 なぜ怖い? 「寂しいよ」 そうだね。 エイクがもしここにいて、それに私が気がついていないなら、私もエイクもとても悲しいね。 でも、愛せる者は悲しむものなんだよ。そうやって死を想像して、死んだ人を悼んで思い出す事が、愛す人々が生きる意味なんだから。それ以外、人が生きる道はないのだから。それを、よく憶えておいで。 どんな道でも、教えや信じるものが違っても、結局はそれだけなんだ。 君ならわかるかな、エイク。 おわり
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