庭にて

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 仕事を辞めたことに対する後悔がないとはいえ、自分で自分が情けなかった。初対面の女性にする話ではなかったが、もうどうにでもなれ、そんな気分だった。  「あなた、可笑しなことをおっしゃるのね」  そう言って、女性はコロコロ笑った。私はどうして笑われたのかわからないまま、黙って女性を見つめていた。  「全ての物事には必然性があるのよ。本当に、思い当たる節はないのかしら?」  私が仕事を辞めねばならなかった理由、私が本当にしたかったこと、そんなものあっただろうか……いや、十年以上前に諦めて、置き去りにした夢とすら言えないものならあったかもしれない。  「もし仮に、やりたいことがあったとして、今から追いかける馬鹿いませんよ。もう私は十代の少年じゃないんです」  いくぶん語気を強めて、私は言った。そう、私はもう可能性に満ち満ちた若者ではないのだ。  「あなた、奥さんもお子さんもいらっしゃらないんでしょう?守るべきものはないのに、何を恐れているの?誰のために自分を犠牲にしていらっしゃるの?」  随分と簡単に言ってくれたものだ、と思うが、私は今誰のために生きているのだろう。  「人には誰しも必ず、成すべきことがあるわ。ただみんなそれに気づかないだけ」  果たしてそうだろうか。  「ヒトの寿命は長いわ」
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