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え…颯馬…?颯馬の力は強くて、とても振りほどけなかった。流されるまま連れていかれたのは、男子トイレだった。そして俺の手を無理やりどかす。
「結構、血が出てるな…。」
そう言いながら、手に持っていたポケットティッシュからティッシュを何枚か取り出し、俺にくれた。
「ほら、使えよ。それで鼻の付け根抑えながら下を向いたら、出血は治まるから。」
「……あ、ありがと……。」
俺は言われた通り、付け根を抑え、下を向いた。颯馬は俺の隣に並ぶ。そして、優しく背中を撫でてくれた。
「大丈夫か?…あ、ティッシュ足りなくなったら言えよ。」
「…うん…ありがとう。」
今では、颯馬の容姿は別人みたいだが、昔からこういう優しさは変わらない。あの時も…
9年前
「二度と学校に来んな!グズが!」
「ブス!消えろ!!」
放課後の教室、クラスメイトに俺は、暴力を振るわれていた。毎日…飽きるほど殴られたり蹴られたり…。最初は苦しかったり悲しかったりしたけど、時間が流れるにつれてその辛さを忘れてしまった。
「ちっ、つまんねぇ顔ばっかするようになったな。」
「あっ…なぁなぁ!」
「何だよ?何かいいことでも思いついたか?」
「じゃーん!これはどうだ?新鮮だろ!」
そう言って、いじめっ子軍の部下らしき男の子が出したものは…カッターだった。
「これを、こいつの体に傷つけるってのはどう?」
「おー、いいじゃん!じゃあ早速…」
そう言って俺の手足は、がっちり拘束された。
「…お、お願い…やめて……」
当時、カッターを見たことがなく、しかも長く刃が出ていたから恐怖を感じた。
「あぁ!?やめてくださいだろ!!」
そう言って、俺の左腕にザーッと傷がつく。
「うぁぁぁっ!やだ!誰か助けて!!」
「おい、叫ぶな!誰か来たらどうすんだよ!こいつの口塞げ!」
「おう!」
そう言って、俺の口は塞がれた。もう…どうすることも出来ない。このまま死んでしまうのかと思っていると、突然教室のドアが開いて人が来た。
「な、何してるんだっ!」
その声は今でもハッキリ分かる。颯馬の声だった。
「うわっ、颯馬だ!」
「逃げろ!!」
「あっ…おい待て!!」
俺をいじめていたクラスメイト達は、素早く逃げていった。
「ちっ…アイツら…ただじゃおかないぞ…?それより、輝君!大丈…夫………輝君?」
俺は颯馬の顔を見れて安心したのか、涙が溢れ出して止まらなかった。
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