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「…輝…君?どっか痛いの!?大丈夫!?」
「ち…違……これは……」
颯馬は凄く優しかった。そんなことは大分前から知っていたけど、改めてその優しさを実感して涙が止まらなくなってしまった。
「颯馬君が…助けに来てくれたから…嬉しくて……」
そう言うと、颯馬は優しく頭を撫でてくれた。
「助けるのなんて、当然でしょ?友達なんだから!」
「颯馬君!!」
俺は、颯馬に抱きついて号泣した。嬉しくて仕方なかったから。
いつもそうだった。か弱い俺を、颯馬がいつも助けてくれた。颯馬には、迷惑しかかけられていなかった。あーあ、情けないな。俺も…颯馬に何かできることはないんだろうか……。すると、景色が突然真っ暗になった。これは…夢……そっか、もしかしてさっきのも夢なのかな?すると、正面に颯馬が立っていた。
「…颯馬……?」
「……」
颯馬は黙って俯いている。
「颯馬…?どうし……」
俺はずっと無言の颯馬に近づいて肩に手を置く。すると、バシッと鋭い音が鳴って俺の手の甲は赤く腫れた。
「……え?」
「いつも……いつもいつもいつも!!お前に手を焼いていてうんざりだった!!!」
「颯…馬……?」
急に声を荒げる颯馬に、俺は驚いた。彼が、今まで一度も見せたことがない怒りの表情。
「お前が弱くて、全然喧嘩しないから俺が助けに行ってたけど…もう限界!少しは成長しろよな!?俺に迷惑ばっかかけて、どういうつもりだよ!俺をこれ以上殺すんじゃねぇ!!」
「うわっ!」
颯馬がそう言った瞬間底が歪み始め、俺は真下に落ちて行った。俺が落ちるのを見て、颯馬がニヤッと笑っているように見えた。
「……っ!」
目が覚めて、体を勢いよく起こす。ここは…保健室…?
「はぁ…はぁ……」
ビックリして心臓がバクバクと動く。まさか…颯馬が……。そう考えると怖くて余計に息が荒くなる。すると、ドアが開いた。
「失礼します…あ、輝!大丈夫か?」
その声にビクッと俺の体が反応する。聞き慣れた声…颯馬だった。さっきの夢の颯馬が頭に浮かび、俺は視線をそらした。
「何でこっち向かねぇんだよ?」
「…な、何となく……?」
「……変なの。」
「…あ、あのさ…」
俺は思いきって口を開く。
「何?」
「…ごめん…俺のせいで迷惑かけて……ごめん……怒ってる…よね……」
そう言った瞬間、バチンと鋭い音と共に、俺の頬は赤くなった。
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