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「……え?」
頬がじんじん痛んだ。そしてやっと、頬をぶたれたことに気づいた。
「……ぁ」
颯馬の顔は青ざめていった。そして、何も言わずに走って行ってしまった。…俺、颯馬に嫌われたのかな…?そう思うと、涙が溢れて止まらなかった。ずっと、心の中で謝っていた。
「目、痛い……」
泣きすぎて目が腫れた。流石にこの顔のままでは、部活に戻れない。職員室に行ってその事を伝え、俺は今家に向かっている。部活に入って早々、早退するなんて…。情けなくて親に向ける顔がなかった。そして、家に着くと幸運なことに両親二人とも夜遅くなるらしい。安心して、ソファーに寝っ転がった。今日は…疲れたな……。そう思いながら、俺は眠りについた。
「わーん、わーん」
誰かが泣いている。誰だろう?辺り真っ暗で何も見えない。すると突然、正面に一人の男の子が大きな声で泣いていた。あれは…昔の俺だ。確か、小学生になったばかりの時、俺があまりにもなよなよしていて目をつけられて…そこから暴力をふられるようになったんだっけ…。そう思っていると、向こうからもう一人別の男の子がやって来る。そして、過去の俺に向かって話をする。
「大丈夫だよ、あいつらは俺が追い払ったから。」
「ひっく……本当…?」
「本当だよ。だから安心して。」
「…うん、ありがとう。」
そう言って笑う男の子に、俺も、過去の俺も、嬉しくなった。すると、男の子は過去の俺に近づく。
「けどさ、本当に迷惑ばっかりかけるよね。いい加減にしろよ。俺の時間を奪うんじゃねぇ!」
「はっ…!」
俺は目を覚まして体を起こし、辺りを見渡す。また…あの夢……?考えたくなかった。もう…颯馬とは関わりたくない。目をつぶってソファーの上で蹲っていると、家のチャイムが鳴った。……誰?俺はソファーから降りて玄関に向かった。
「はい、どちら様でしょう…か……」
ドアを開けて正面を見ると、汗だくで息を切らした姿の颯馬が立っていた。
「えっ……と………」
「輝、お前と話がしたくて来た。今いいか?」
正直、今は颯馬と話す気になれなかったが、息を切らしながら真剣にそう言う颯馬に、俺は駄目という気になれなかった。
「…うん、いいよ。立ち話もあれだし、今親もいないから、入りなよ。」
「じゃあ、お邪魔します。」
そう言って、俺は颯馬を家の中に入れた。
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