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山城先生が紹介する。
「この子は、高橋颯真君。お家の事情で、こっちに引っ越してきたのよ。みんな、仲良くしてあげてね。」
「はーい!」
みんなの元気な声が園内に響き渡る。颯真君…か……。綺麗な顔だなー…。そんなことを思っていると颯真君が俺に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、君…名前は?」
「…え……?…如月…輝……」
「輝君?かっこいい名前だね!輝君、あっちで一緒に遊ぼう!」
「わっ…ちょっと…颯真君……!?」
颯真君は俺の腕を引っ張っていき、静かな場所に連れてきた。
「ねぇ、輝君の持ってるその本って…【暗黒の少年】だよね?」
「う…うん……」
まさか、この本を知っている子に出会えるなんて…
「俺ね、お父さんにこの本読んでもらって凄く気に入ったの!途中で男の子が黒い服の人達に拐われた時とか、ハラハラドキドキしたよー!」
「あ…俺も……。最後は力づくで倒した瞬間とか、かっこいいなって思ったもん。」
「だよね!俺もだよ!!あとはさー……」
初めて、他の人と話した。自分の趣味を分かってくれる子に出会えて、俺は気持ちが高まった。こんな気持ちは初めてでとても嬉しかった。
「輝君、颯真君。」
「あっ…先生……」
声が山城先生と分かり…俺は恐怖でいっぱいになった。俺はその場に俯き、体の震えを抑えようとした。
「ここで本を読むのもいいけど、あっちでみんなと一緒に遊びましょう?みんな、颯真君と遊びたいって言ってるのよ?」
「…分かった。輝君もあっちで遊ぼ……って、輝君?どうしたの?」
俺が震えていることに気づいたのか、俺の様子を伺う颯真君。
「だ…大丈夫だよ…?何でもない…から……」
「具合悪そうね?輝君。涼しい場所に移って少し休みましょう?颯真君は向こうのお部屋で遊んでていいわよ。あとは先生に任せて。」
「わ…分かった……」
俺はそのまま山城先生に腕を取られ、また道具部屋に連れていかれた。そしてまた、体罰をされる。
「あなたねぇ、友達と仲良くなるのはいいけどその子を1人で独占しないでちょうだい!」
「……うっ!」
独占なんて…していないのに……何でこんな…誰か助けて……。もう…先生が何を言ってるのかも…分からないや……。意識が朦朧としていった時、部屋のドアが勢いよく開いた。そこには、颯真君がいた。
「先生…何やってるの?」
颯真君の顔はとても険しかった。
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