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翌日、俺は男子バレーボール部の顧問の先生に入部届けを提出した。顧問の先生は期待の目をしながら俺に向かって言う。
「おぉ、如月。バレー部入ってくれるのか!」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「いやぁ、入ってくれないのかと思ってがっかりしてたけど…その気になってくれて嬉しいよ。」
え?俺はふと疑問に思い、先生に尋ねた。
「あ…あの…俺が別の部活にしようと思ってたの…何で知ってるんですか?」
「あー…もしかして覚えていないか。」
覚えて…いない……?先生は続ける。
「ほら、私立入試の面接あったじゃないか。私はその時、君の担当の面接官だったんだ。」
「あ、あの時の…。」
俺はふと頭によぎった顔を思い出す。面接で緊張していて何も言葉が出なかった時に、優しい声で俺の緊張を解してくれた先生だ。
「す、すみません。俺…。先生のこと、忘れてしまって……。」
「いいんだよ。思い出してくれただけでも十分嬉しいから。ありがとう。これからよろしくな。」
「…はい。」
そう言って、俺は職員室を出る。教室に戻ろうとすると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
「輝!」
「颯馬っ!」
俺は嬉しくなり、颯馬に近寄った。
「入部届け出したよ!これで一緒にいられる時間、増えるね!」
あまりの嬉しさにニヤけが止まらなかった。
「そうだな。俺も嬉しいよ。……早く…俺のものだけになってくれたら、凄く嬉しいんだけど。」
「……え?」
最後の方が小声でよく聞こえなかった。
「ねぇ、最後の方なんて言ったの?」
「……何でもない。気にするな。」
「えぇー!教えてくれたっていいじゃんかよー!」
「今度教えてやる!」
そう言って笑った颯馬に、何も言えなくなった。まぁ、今度教えてもらえるし別にいっか。そう思いながら、俺は先に教室に向かう颯馬の後を追いかけた。
授業終了後、俺と颯馬は体育館に向かう。他愛もない会話をしながら。すると…
「颯馬君っ!」
後ろから女子の声が聞こえ、振り向くと小柄で明るいクラスのムードメーカー的存在の女子がいた。
「赤井さん。」
「もー!紗理奈って呼んでよ!私も体育館だから一緒に行ってもいい?」
「…いいよ。」
「ありがとー!!」
「颯馬…この子は?」
「あぁ…彼女は赤井紗理奈さん。俺らと同じ1年で男バレのマネージャーの子だよ。」
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