魔法よりも大事なもの

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緑と人と魔法が共に生きる国・ファルメーリアは十年前、邪悪な魔法を使う黒いローブの集団によって国民を操られ、国を火の海にさせられたが、優秀な魔法使いがそれを沈め、生き残った国民が助け合いながら復興をすすめ、今では平和で穏やかな空気が国中に流れている。 町から少し離れた小高い丘の上、森の近くの一軒家で、僕アルストと兄のヴィオは一緒に毎日を過ごしていた。 「特訓始めるぞー、アルストー?」 「はい兄さん、今行きます!」 僕たちは、十年前の黒いローブの集団との戦いで命を落とした両親の仇を討つために、僕は兄さんから魔法の特訓を受けている。兄さんはとっても優秀な魔法使いで、高度な魔法を町の人から偉い人まで無償で助ける活動をしたり、小さな子たちに魔法を教えるボランティアをしている。みんなのヒーローのような兄さんは僕の自慢でもあった。 逆に僕は、元々魔力が少なくて技術もうまくない。昔は枯れた花を綺麗な状態に戻すことぐらいしかできない自分の能力の弱さに嫌になったときもあったけど、兄さんとの特訓のおかげでできなかった基本の魔法もできるようになった。弱い自分を受け入れて、できることから少しずつやってきた。今日も家の裏庭で、兄さんとの特訓が穏やかに始まる。 「昨日教えた、固定魔法はできるようになったか?」 「うん! 家のいろんなものを固定するの楽しかった!」 「後で解除したのは俺だけどね。じゃあ今日はその解放魔法の特訓を――」 「オレも特訓にいれてー!」  明るい声のするほうに僕たちは顔をむけると、町の方から駆け足でリコルがこちらへ向かっていた。僕と同い年のリコルも、十年前の戦いで亡くした両親の仇を討つために僕たちと一緒に魔法の特訓をしている。魔法の強さと技術は普通の魔法使いと同じくらいらしい。 曖昧なのは、リコルは特訓中に回復魔法しか使わないから、攻撃とか防御がどのくらいなのかがわからない。リコルが言うには『自分の魔法の色は変な色だから恥ずかしくて見せられない』と。確かに魔法の色は魔法使いによって違うけど、今までに変な色の魔法を見たことはない、むしろみんな綺麗でキラキラ輝いていた。ちなみに僕の色はパステルイエローで、兄さんはパステルグリーンだ。
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