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「どうせリコルは回復以外の魔法使わないんだろ?」
「そうだけど~ヴィオさん教え方上手だから、聞くだけ聞いておきたいんだよ~」
「リコルは終わった後、家で練習しているって聞いてるから大丈夫だよ、アルスト」
「まぁ、兄さんが言うならいいか。リコルも来たし、早く魔法の特訓始めよ!」
僕は兄さんと少し距離をあけて向かい合う。離れたところでリコルが僕たちの様子を足を崩しながら見ている。昔はリコルに見られるのは恥ずかしかったけど、十年も経てば慣れて当たり前になっていた。
「今日教える解放魔法は、魔法で固定されたものや鍵のかかった錠を解除する魔法だ」
兄さんは鍵のかかった可愛らしいおもちゃの宝箱を地面に置いて、愛用の短剣を宝箱に差し向けると、
「我が魔力を秘めしウォルガーナの短剣よ、宝箱の鍵を解除せよ!」
兄さんが呪文を唱えると、短剣がパステルグリーンに輝いて、光が宝箱を包んでいく。光が消えると、宝箱の鍵穴からカチャと音が鳴る。
「唱える時に鍵を開けるイメージや、対象から何かを解放したいと思う気持ちが大事だよ」
「イメージと気持ち……やってみます!」
魔法で開けた宝箱を、兄さんがもう一度鍵をかけて僕の前に置く。大丈夫、落ち着いて気持ちを込める……。僕は宝箱に杖を差し向ける。うわ、なんか緊張して手が震える……。
「わ、我が魔力を秘めし、ビリンダルの杖よ……は、箱を開けろ!」
杖に力を入れたせいで、魔法が宝箱からずれてしまった。ずれた先には兄さんがいて、僕の全身に鳥肌が立つ。
「兄さん!」
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